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助け合いながら頑張りました。もちろん先生たちも一生懸命励まし、教えてくださったことに感謝しております。
様々なことがありましたが無事、小学部を卒業し中学部へ進みました。中学部になって間もないころ、突然、「お母さん、僕耳が聞こえないから生まれない方がよかった」と言われました。そのときは私もどう答えていいかわからず、「本当だね。みんなお母さんが悪いの」ζ言いました。仁は、「お母さん、僕悪かったこめんなさい」と謝りました。そして仁と抱き合って泣いたこともありました。
いろいろなことに出会いながら、中学部も無事卒業しました。高等部へ進み専攻科工芸印刷科の全課程を修了。卒業後は地元の秋田への就職を希望していたところ、また突然、「僕、印刷の仕事でなくて車の会社に入りたい」と言い出しました。私は、「そばにいて欲しい」と考えていたので、本当に困ったが仁は、「どうしても」と言います。
「可愛い子には旅を」の諺を思い出し覚悟しました。東京の車の会社を先生と家族で見学に行きました。でも東京では働く場はありませんでした。名古屋にあったが遠いので困っておりました。
しばらくして学校から、「横浜の日本電気はどうですか」と言われ、親子三人でテストと面接に挑戦しました。県外からのろうの受験者は二十人ほどいました。テストも終わり、会社ではそれぞれに部屋を取ってくれ、ゆっくり休ませてくれました。でも私は合格するのか不安で一睡もできませんでした。

 

 

 

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